2019年夏。ニュージーランドの飛べないオウム・カカポが大繁殖中! 

ニュージーランドは世界でもこの国でしか見られない珍しい生き物の宝庫。しかも、その多くが絶滅の危機に瀕しています。

中でも、3大希少種と言われているのが、キウイ、タカへ、そしてカカポという飛べない鳥たち。

そのうちの一種カカポは、特に数が少なく、全地球上に147羽しかいないのです(2019年2月現在・成鳥のみ)。

でもでも! このカカポたちが、今年は大繁殖しています! 

今回は、現時点での最新情報をお届けしましょう。

ニュージーランドの遊び方を1000個見つけるブログ 49/1000

 

Kia Ora! うちだいずみです。

ニュージーランドの遊び方を1000個見つけるブログ、49個目の今回は、大繁殖が続いているカカポのレポート、2019年2月7日版です。

まずは、カカポの基本情報をご紹介しましょう。

カカポとはどんな鳥? なぜ減ってしまったの?

カカポ(Kakapo)とは、マオリ語で「夜のオウム」(Kaka=オウム、Po=夜)という意味で、その名の通り夜行性のオウムです。

世界一重く、飛ぶことはできませんが、木に登ったり、木から飛び降りたりすることはできます。ただし、重いので、枝に引っかかったりして、超不器用に見えます(笑)

もともとはニュージーランド中に住んでいましたが、1000年ほど前から移住してきたポリネシア系のマオリ人の人に食べられたり、住処を切り払われたり、またマオリ人の連れてきたナンヨウネズミやイヌなどによって、次第に数を減らしていました。

さらに、およそ200年前にヨーロッパ人が移民を始めてからは、加速度的な危機が迫ります。

大規模な森林伐採、それにネコ・オコジョなどの連れてきた動物による捕食が続き、1980年代には生き残っている数が40羽に減ってしまいました。

ニュージーランド自然保護省のカカポグループは、カカポ・リカバリー・プラン(カカポ保護回復計画)を立て、必死に守ってきました。そのため、数はゆっくりと増えていきましたが、この30数年でほんの100羽くらいしか増えていないのです。

その結果が、現在たった147羽、という貴重なカカポたちなのです。

カカポはどこに住んでいるの? 誰が保護しているの?

カカポは、オウムの仲間らしく、一羽一羽に個性がめちゃくちゃあります。すべての個体に名前もついていて、保護のために家系図も、DNA検査もされています。

現在は、コッドフィッシュ島、アンカー島、リトルバリア島という3つの離島に分散保護されています。一般の人がカカポに会えるチャンスは、大変限られています。

繁殖は数年に1度、特にリムという植物の実のなる年にすると言われています。今年の大繁殖は、保護が始まって以来最大のものです。

カカポのオスとメスは、どんな風に子育てするの?

カカポは、普段はひとり暮らしを好む鳥です。なわばりもあります。

しかし、恋の季節になると、オスは小高いところに集まってきます。そこで、それぞれのオスが地面を掘ってボウルのようなものをいくつか作り、その中に座って一晩中メスを呼ぶのです。

ボウルとボウルの間は、草を抜いたりして道(トラック)になっており、トラック&ボウルシステムといいます。

メスがくると、オスたちはダンスをして自分を選んでもらおうとします。

メスは、やってきて交尾をすると、ペアになるのではなく、ひとりで巣穴を作り、卵を産み、ヒナを育てます。シングルマザーなので、食べ物がないと遠くまで探しに行かなくてはならず、その間にヒナが飢え死にしたりしてしまいます。

オスは子育てには一切参加しません。繁殖期の間中、毎晩、一晩中メスを呼び続け、交尾をすることに体力を使い果たします。繁殖期が終わると体重の3割ほどが減ってしまうほどなんです!

以上のことが分かっていると、カカポ保護チームの話が分かりやすいと思います。

現在(2月7日)の卵の数、ヒナの数、そして大胆な保護計画とは!

 

カカポの情報はいろいろなところで出てきており、前回ブログでご紹介しました

その中から、タイムリーかつ突っ込んだニュースを届けてくれるニュージーランド・ラジオのレポート「カカポ・ファイル(6〜8)」を中心に、カカポの保護現場でどんなことが行われているか、解説を含めてまとめてみましょう。

 

カカポの現在の卵の数は? 難題あり? そして嬉しい新記録!

現在分かっている卵の数は、なんと148個! 今いるカカポの成鳥の数147羽を抜いています!

しかし、実はカカポの繁殖には大きな問題があります。それは、無精卵がとても多いことなのです。

今年の場合では、すでにこのうちの75個が無精卵であることが分かっています。

さらに、孵化する前の卵の段階でヒナが死んでしまうことも多く、今年は13羽が死んでしまいました。

また、有精卵か無精卵か、分かっていない卵が11個あります。

なので、計算してみると、少なくとも49羽(卵の総数148 – 無精卵数75 – 卵の中で死んだ数13 – 不明数11=49)が生まれる可能性はあるのですが、生まれた卵の数の1/3くらいですね・・・

うん、でも、すごい数です!!

 

それに、他にも新記録があります! カカポは普通2個から4個の卵を産むのですが、アンカー島にいるラーちゃんが、なんと1度に5個も卵を産んだのです! 赤ちゃんカカポ5羽! お母さんが大変すぎます・・・

 

カカポの繁殖を助ける様々な保護策

シングルマザーのカカポのメスを助けるために、自然保護省では、これまでにいろいろな策を講じてきました。その代表例を挙げましょう。

●補助餌(supplementary feeding)

カカポの住んでいる島のあちこちに餌台を作り、そこに栄養たっぷりのペレットなど、カカポの栄養状態を保つための餌を置いておきます。

●卵やヒナの見守りと保温(nest minding)

お母さんカカポが夜に食べ物を探しに出かけている間、卵やヒナだけが巣穴に取り残されます。その間に卵やヒナが冷えてしまうと、死につながりかねません。

そこで、巣の位置がわかると、その側にテントを立てて、一晩中ボランティアが巣を見守る、ということもしてきました。巣の入り口近くにカメラを置き、お母さんが巣から出たら、そっと卵やヒナに電気毛布をかけてあげるのです。

私は、こうしたボランティアをかつてしたことがあるのですが、お母さんカカポが巣を出ると、赤外線でドアベルのように「ブー」という音がなりました。カメラをチェックして、毛布をかけて、お母さんが戻るまで待つのは、眠かったし、責任重大だけど、すごく心楽しくなる体験でした(笑)

●卵やヒナの人工孵化・人口飼育(artificial incubation and hand rearing)

こうして外から守っているのに加え、生まれた卵やヒナを人口孵化・飼育するということも続けられています。これは、ヒナの体調が良くなかったときの緊急策だったり、お母さんカカポの負担を減らすということが理由ですが、もうひとつ、卵がなくなるとお母さんカカポはシーズン中にもう一度交尾をして、また卵を産んでくれる可能性もあるからです!

今年の大胆な保護政策! 生まれた卵は全てXXXする!

 

今年、カカポは大繁殖するだろうとシーズン前から予測されていました。それは、カカポの好物のリムの実がたくさんできることがあらかじめ分かっていたからです。

そこで、自然保護省は大きな賭けに出ています。それは、生まれた卵をすべて回収して、人口孵化する、というものです。

上記の通り、お母さんカカポは育てていた卵やヒナが死んだり無くなったりすると、もう一度交尾して巣作りをしようとします。

それに賭け、一気にカカポの数を増やそうと言うのです。

これは初めての試みなので、自然保護省のみなさんも心配でドキドキしていますが、今の所、アンカー島ではすでに8羽のメスが、フェヌア・ホウ島でも1羽のメスが2回目の交尾をしており、どれだけ卵を生んでくれるか、レンジャーが待ち望んでいるところです。

 

カカポの遺伝子は限られている・・・その対策は?

 

カカポは、一時約40羽ほどに減ってしまったことがあるので、その遺伝子のバラエティが非常に限られています。

近親交配が進むと、種として脆くなってしまうので、同じオスがたくさんのメスと交尾したり、同じオスメスの組み合わせばかりにならないように、自然保護省ができる限りのコントロールをしています。

その一つのやり方が、人工授精。オスを捕らえ、精液を集め(うまく撫で撫でしてあげると集めることができる)、顕微鏡で精子の状態が健康かどうかを確認した上で、メスに注入するのです。

無精卵が多い理由のひとつは、オスが年寄りだったり、遺伝的な問題がある場合も考えられます。精子が曲がったり切れたりしていたり、数が少ないということもありました。なので、今ではこうしたオスは交尾をしないように隔離していますが、それでも精子のチェックは大事なのです。

また、カカポの個体の全遺伝子調査も続けられています。各個体のゲノムが分かることによって、カカポという鳥の不思議な生態がさらに解明されることが期待されています。

で、今、どのくらいのヒナが孵っているの? そしてなんと、ヒナがダニーデン に!

 

カカポ・サイエンティストのアンドリュー・ディグビーさんのTwitterでは、毎日のように新しいヒナの誕生が報告されています!

これを書いている2月7日朝の時点で、11羽のヒナが孵っています❤️

ヒナの名前の見方は、こうなっています。生まれたばかりという、このヒナの名前を見てみましょう。

 

 

この場合は、アタレタというメスが最初に作った巣で生まれた卵の中の、1番ということです。

鳥たちの名前は、そのうちに公募などがされて、つけられることになっています。

そしてそして! 私的に超大ニュースなのは、11のヒナたちのうちの5羽が、今、私の住んでいるダニーデン に来ているということです!

なぜかというと、カカポたちのいるアンカー島、フェヌア・ホウ島、リトルバリア島は、自然保護省のレンジャーしか在留していない島で、小屋も設備も小さいのです。50羽ものカカポのヒナを人口孵化・飼育するのは難しいこと。

そこで、ダニーデン にあるニュージーランド唯一の野生生物専門病院・ワイルドライフホスピタルに一時預かりをすることになったのです!

同じ町にいるなんて、本当に嬉しい(^^)

続報はまたブログでもお伝えしますが、毎日の情報を知りたい方は、ぜひ私のTwitterをフォローしてください! 超最新情報をお届けしています。

どうかヒナがみんな元気に育ちますように!

 

 

 

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