NZの小さなセミは、この国の自然を象徴しているスゴい存在だった

数日前、庭に出ていたら、懐かしい声が聞こえてきました。セミの声です。

今年はじめてのセミの声! ようやく夏がやってきたようです。

ニュージーランドの遊び方を1000個見つけるブログ 26/1000

Kia Ora!  うちだいずみです。

ニュージーランドの遊び方を1000個見つけるブログ、26回目の今回は夏の風物詩・セミと遊びましょう。

夏のニュージーランドに来たことのある方は、「ジー……ジー……ジー」という声を聞いて、「あ、セミだ!」とすぐにお分かりになると思います。そう、日本のセミとは違っても、鳴き声はやはり「セミっぽい」んです。

でも、日本みたいに「気が狂いそうだからやめてくれ」というような大音響じゃなく、控えめで、その上、妙に近いところから聞こえてきたりします。

例えば、生垣の中とか。ジャガイモの葉の上とか。小さな子供でも目線以下のところにちょこんといたりします。

そう、実はニュージーランドのセミは、全部が小さいんです。なので、声もそれほど大きくありません。

そして、だいたいは地上1メートルくらいのところで鳴いています。

この写真を見てください↓。セミは全て、娘が庭で手でつかまえたものです。

でも手にとまってる! なぜ? と思われたかもしれませんが、最初から手にとまっているわけではありません。パッとつかまえて(簡単につかまります)、それをしばらく(30分くらい?)ガラス瓶の中に入れておくのです。

すると、はじめのうちは外に出ようと動き回るんですが、そのうちに、「僕の世界の広さは、これだけなんだ……」と思い込んでしまうらしく、じーっと動かなくなってしまいます。

そのあとで、外に出してあげても、放っておけば10分くらいは動きません。もちろん、体に害を与えているわけではありません! あくまで、セミのマインドの問題です。空間認識力に影響を受けやすい、という言い方もできると思いますが、私は「思い込みが強くて、すぐ自分の作り上げた世界に入り込んでしまうセミちゃん」と呼んでいます(誰それのことではありません、セミです、そしてあくまで私個人の見解です!)。

そのことを利用させてもらうと、こんなにいっぱいのセミといっぺんに遊ぶこともできます(この時は、本当は身体中にくっつけていたので、10匹以上いた)。

このまんま、一向に動かないので、最後は一匹ずつ生垣などに戻してやらなくてはなりません。観察にはもってこいなんですけどね(笑)

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さて、このセミなんですが、正式な名前はコーラス・シケーダ(Chorus Cicada :  Amphipsalta zelandica)と言います。英語でセミのことをシケーダというので、「合唱ゼミ」ということですね。色が緑色のと茶色のと黒っぽいのといますが、同じ種類です。

ニュージーランドではいちばん普通に見られる種類で、全国で見られますが、驚くべきことに、これがニュージーランドのセミの中でいちばん大型のセミなんです。可愛いでしょう? これで4cmくらい、といわれていますが、もっと小さく感じます。

このコーラス・シケーダ、マオリ語では「kihikihi-wawa(キヒキヒ・ワワ)」と言います。キヒキヒとはセミのこと。ワワというのは大雨のように轟々と響く、という意味です。こちらで声を聞いてみてください。

1匹だけでは、それほど大きな声に感じないかもしれませんが、このコーラス・シケーダは、もともとは森に大量に住んで大合唱をするセミなんです(そういう場所も残っています)。たくさんが集まれば、ゴウゴウと大雨のような声になるのかもしれませんね。

このセミ、町中でも普通に見られるんですが、実はコーラス・シケーダのいるところは「昔、森だったところ」だと考えても良いのだそうです。今は失われた森の面影を歌い続けているセミ、なんでしょうか。そう考えると、ちょっと切ないですね。

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そればかりではありません。ニュージーランドのセミは、この国の自然のスゴイところを代表している生物とも考えられています。

何がすごいかというと、まず、42種類もいるところ。同じ島国であるイギリスには原生のセミは1種類しかおらず、ニュージーランドよりはるかに生物の多様性が豊かと考えられている日本でも30種類ほどがいるに過ぎないのに、それよりもずっと多い。

これは、生物関係者がよく言うアイランド・マジック〜島の魔法〜がかけられているからです。

アイランド・マジックとはどういうことかというと、閉ざされた環境である島にたまたまたどり着いた生物が、その島の環境に適応して生きていくために、独自の進化をすることを言います。

その例として、大陸に住む仲間の生物に比べて、大きくなる、小さくなる、形が変わる、種類が色々に増えるなどが起こります。

ニュージーランドのセミの場合は、1100万年前から現在までの間に、オーストラリアあるいはニューカレドニアからニュージーランドにやってきたと考えられています。そして、様々な場所に住みかを開拓していく間に、多様な種になっていった(適応放散、と言います)のです。

いろいろな場所に進出していった代表的な例は、世界で唯一、岩だらけの高山をすみかとしている小型の黒いセミでしょう。この珍しいセミには、マオリシケーダというラテン名が付けられています。世界的にはあまり知られていませんが、ニュージーランドの自然を象徴するセミと言えるでしょう。

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ニュージーランドのセミは、だいたい3年〜5年くらいを地中で過ごし、地上に出てきてからは2週間〜4週間の命です。可愛いけど、大事な時間だから、つかまえてもすぐに放してあげないといけませんね(汗)

セミの季節、まだ、もう少し続きます。

寒いと、セミも元気がなくなります。冷夏が終わるといいなあ。

それではまた! Nga mihi nui (Thank you very much!)

 

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