【データで見る】ニュージーランドは全国封鎖33日間でどんな成果があったのか。ジャシンダ首相の記者発表を振り返る

Kia ora! うちだいずみです。

本日2020年4月27日、ニュージーランドは、コロナウィルス(COVID19)のパンデミックに対する前例のない長期的な全国封鎖(ロックダウン)33日目、最終日を迎えました。

明日からは、「必要なビジネス」のみが行われていた警戒レベル4から、「安全なビジネス」も再開できる警戒レベル3へと移行します(詳しくはこちらの記事、あるいは政府のサイトをご覧ください)。

3月25日から始まった全国封鎖。この33日間でコロナウィルスに対し、どのような成果があったでしょうか。本日行われたジャシンダ・アーダーン首相と、アシュリー・ブルームフィールド保健省長官の記者会見、およびこれまでのデータから振り返ってみましょう。

ロックダウン前夜のNZの状況

現状を伝える前に、全国封鎖直前のニュージーランドはどのような状況だったかを、簡単に述べておきましょう。

ニュージーランドで初めての感染者が見つかったのは2月28日でした。

その後少しずつ増えてはいましたが、感染者がまだ8名の3月15日、すでに太平洋諸島をのぞく全ての国からの入国者に14日間の自主隔離を要請

この頃、ニュージーランドは「被害を低減する(mitigation)」か「排除する(elimination)」か、という選択肢があることを論議していました。結果、排除することを決め、その方向に舵取りをして、それを実行に移していったのです。

3月21日、感染者52名の段階でCOVID19警戒レベルシステムを発表。レベル1(発生は抑えられており、警戒段階)、レベル2(コミュニティへのリスクあり、集会制限、国境制限、社会的距離の奨励など)、レベル3(感染可能性があり、安全なビジネスは続けられるが、集会等は全てキャンセル)、レベル4(市中感染あり、必要最低限以外のビジネス停止、全国封鎖)の4段階で、この時点は警戒レベル2とされました。

3月23日、感染者が102名となった日に、レベル3となり、2日後の25日から警戒レベル4の全国封鎖を4週間続けると発表。これは、市中感染が疑われる例が2件あったためで、今すぐ感染の鎖を断ち切らなくてはならないという断固とした動きでした。

国民は、海外での被害、特にイタリアやスペインで大きな被害が出ていることは知っていましたが、国内ではまだ重症者・死者の話もほとんど聞いたことがない時点でしたので、あっという間の展開に、やや戸惑いつつも、「みなさんの仕事は、命を救うことです。そのために家にいてください」という首相発言に納得したのでした。

ロックダウンに入った3月25日の段階では、感染者総数は205名、死者ゼロでした。

1日の新感染者、検査数、R0値、死亡者数他

それでは、ロックダウン33日がすぎた現在、どのような状況なのかを見てみましょう。

1日の新感染者数: 山を越えて減少し、この9日間は1桁にとどまる

ニュージーランドの1日あたりの新感染者数は、4月5日の89名を境に減少傾向に転じ、ここ9日間は連続して全国で1桁(3名〜9名)となっています。なお、これは「疑わしい」例も含まれており、確定例ばかりではありません(のちに感染者でないと分かった例もあります)。感染者数の合計は1469名となっています。

ジャシンダ首相によると、もし何も手を打たなかった場合は1日に最高で1000人の感染者が出る、というモデル予測がされていたということ。早期の対策が確実に成果として出ました。

NZ保健省4月27日のデータより

検査可能数: 0 → 8000件/日へ

ニュージーランドが初めてドイツから検査キットを入手したのは、1月末でした。それから、戦略の要として検査数を増やすということを重視し、予算と人手をつけて増やし続け、現在では、1日に8000件の検査をすることが可能となりました。これは世界でも人口あたりの検査可能数としてトップクラスです。

これまでで1日の最多検査数は、4月23日の6961件となります。この1週間(20日〜26日)は、ずっと新感染者数がひと桁にとどまっていたにも関わらず、平均検査数は5374件。市中感染の有無を調べるために、オークランドやクィーンズタウンなどのスーパーマーケットに来た人をランダムに検査することも積極的に行なっており、今の所そうしたランダム検査からは陽性の人が1人も見つかっていません。

検査数に対する陽性率は、先週は0.17パーセント、昨日の段階で0.05パーセントとなっており、市中感染がたとえあったとしても、大きく広がっていることはない、と政府は考えています。

こうした大量の検査・ランダム検査が、政府がレベル3へ移行するための「自信」となっています。

NZ保健省4月27日のデータより

基本再生産数: R0=0.4を達成

ひとりの患者が何人に感染を広げる可能性があるかを示す基本再生産数R0値という指標があります。これによると、R0<1(R0が1より小さい)場合、感染症は終息。R0=1(R0が1)の場合、爆発的な流行は起きないが終息もしない。R0>1(R0が1より大きい)場合、突発的な流行や感染拡大の恐れがあるとされています。

感染が爆発的に広がっている諸国では、R0値は2.5などの数値になっていますが、ニュージーランドでは、このR0値が0.4となりました。

死亡者数: 合計19名

ニュージーランドで最初の死亡者が出たのが3月28日。以降、現在までに19名がコロナ感染で命を落とし、その多くが老人ホームのクラスター感染によるものでした。100万人あたりで換算すると4.05人となり、これは世界的にみても低い値となります。以下の表の右欄は、世界で死亡率の高い国々の100万人あたりの死者の数です。

しかしジャシンダ首相は「人の死は、数ではありません」と、母親や父親など、家族を失った人々へ心のこもった哀悼の辞を述べました。またロックダウン中にコロナウィルス以外の原因でなくなったものの、葬儀をすることができなかった人々にも「これがおそらく、全国封鎖で一番つらいことでしょう」と哀悼と感謝の意を述べています。

接触者の追跡 1日に185件は追跡できるように。目標は1000件

感染者がどこで何をして、誰と会ったかを徹底的に追跡し、濃厚接触者・通常接触者に連絡をとって、検査をしてもらい、自主隔離してもらう。これが接触者の追跡です。

ロックダウンする前は、例えば、感染者がオークランドからタウポまでバスで移動したとすると、そのバスに乗っていた人を全員なんとかして探し出さなくてはならず、これは大変な作業でした。また、そういう仕事をする人員も少なく、接触者の同定に時間がかかりました。

しかし、現在は、1日に感染者185件までを追跡できるだけの仕組みが出来上がりました。これは、電話調査に換算すると、1日に10,000万件の電話をかけまくって、感染者一人一人の行動を追いつくすことが可能ということです。

基本、この追跡は、感染者が属する地方保健局から始まります。しかし、現在はそうした地方保健局のデータがすぐに国全体のデータや、ラボのデータと連動するようになりました。今後は、まずは1日300件まで追跡できるようにし、さらに1日1000件まで増やしていこうとしています。

1日に新感染者数が10件もないニュージーランドで、これから1000件までの追跡能力を持とうと言うことに驚くかもしれません。しかし、今後、第2波、第3波が来る可能性もあります。また、コロナウィルスではない、さらに協力な感染症が現れる可能性もあります。ニュージーランド政府のこうした先を見越した政策は、非常に信頼が持てます。

接触者追跡アプリの開発

世界各国で開発が進んでいる、ブルートゥース・ベースの接触者追跡アプリも、これから2週間以内にリリースする、と発表されました。これは、シンガポールで使われているものをベースにしたアプリだそうです。

しかし、ジャシンダ・アーダーン首相は「シンガポールでさえも、全体の20%の人しか使っていません。このアプリは、大人数が使って初めて効果が出るものなので、私たちはアプリだけに頼るのではなく、人が実際に電話をかけて追跡していけるような体制を大事に考えています」ということでした。

検査による早期発見→接触者追跡→隔離

ニュージーランドが警戒レベル4に入ることを発表したのは、市中感染と考えられる感染例が2件見つかった段階の3月23日でした。

その時から、ニュージーランド政府の焦点は、

大量の検査による早期発見
→感染者を発見したら、その周りの濃厚接触者(close contacts)および通常接触者(casual contacts)を追跡
→濃厚接触者、接触者を検査し、同時に隔離する

この方法をひたすら追求してきました。ワクチンもなければ治療法も確立していない現在の段階では、これしかウィルスに対抗する手段がないからです。

検査可能数は大幅に増え、今後も「少しでも症状があったら、すぐに検査を受けてください」と検査が大々的に奨励されています。

濃厚接触者の追跡能力も、地方レベル、さらに国レベルで高まっており、国の投入した予算が効率よく使われているのが分かります。

ニュージーランドはコロナウィルスをeliminate(排除)することを目標にしていますが、これはジャシンダ首相によると「ウィルスが全くゼロになる、というのではなく、ウィルスに対するゼロ・トラレンス(許容しない)ということ」と説明しています。入ってきたら、潰す。そのための検査、追跡、隔離という方法は、これから先も、ワクチンあるいは治療法などが確立するまで、ずっと続くと考えられます。

警戒レベル3へ。ジャシンダ首相のキャッチフレーズが少し変わりました

私は、労働党のメーリングリストに登録しているので、このCOVID19機器の間、ジャシンダ首相から何回かメールが来ています。

3月25日、ロックダウンが始まった日のメールは、こういう言葉で締められていました。

So please remember:
Be kind
Stay home
Break the chain
Save lives

どうぞ覚えていてください。
やさしくいてください。
家にいてください。
感染の鎖を断ち切ってください。
命を救ってください。

今日4月27日のメールは、このように締められていました。

So please,
stay home,
be kind,
let’s finish what we started.

どうかお願いです。
家にいてください。
やさしくいてください。
始めたことを、終わらせようじゃありませんか。

 

事態は改善し、先の道も見えてきています。あとは「やれば、成果が出る」とハッキリ分かったことをやり続けていくのみ。ジャシンダ・アーダーン首相の「500万人のチーム」のひとりひとりの仕事は、まだ終わっていません。

私の生活も、あまり変わりそうにありませんが、また家の片付けを頑張ります!

お読みいただいてありがとうございました。それではまた! Ka kite ano!(See you again1)

 

 

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