ニュージーランドの野生動物を守れ! TVシリーズ 『Wildlife Rescue (第1回)』徹底解説・キーウィ/アシカ/ケレル編

ニュージーランドは、この国にしかいない珍しい原生動物の宝庫です。しかも、その多くが絶滅の危機に瀕しています。

先週日曜日(2019年11月17日)からスタートしたTVシリーズ『Wildlife Rescue New Zealand』(ワイルドライフ・レスキュー・ニュージーランド/NHNZ制作NZ On Air協力ChoiceTV放送)は、こうした野生動物を守ろうとする保護ネットワークを密着取材したドキュメンタリーです。

ニュージーランドの遊び方を1000個見つけるブログ 73/1000

 

Kia Ora! うちだいずみです。

ニュージーラドの遊び方を1000個見つけるブログ、前回に続き、TVシリーズ『Wildlife Rescue New Zealand(第1回)』(ワイルドライフ・レスキュー・ニュージーランド)の放送内容を詳しくご紹介していきましょう。

前回は、ニュージーランド本島に700羽ほどしか残されていないキンメペンギンの保護の様子を中心にお伝えしました。

今回は、番組の中心であるダニーデン動物病院に運び込まれていた他の動物や、ダニーデンで最後に残された原生の森などについてご紹介します。ここから先は番組の内容をご紹介しますので、まだ見ていない方は、先にオンラインで番組を見てから読んでくださいね!

希少なトコエカ・キーウィがいるオロコヌイ・エコサンクチュアリ

ダニーデンは、ペンギンやアルバトロス、オットセイなど海の生き物がよく知られていますが、実は陸の珍しい生き物たちが暮らしている場所もあります。

街からおよそ20キロの郊外にある、オロコヌイ・エコサンクチュアリ が、その特別な場所です。

ここは、ダニーデンに残された一番広い原生林。そして、森の周りを高い柵で囲み、中にいたオコジョ、フクロギツネ、ネズミなどの外来侵入種を全て駆除し、ニュージーランドにもとからいた動物たちが安全に住める場所にしたサンクチュアリなのです。

柵の長さは、9kmにおよび、柵の中には森ばかりではなく、川や湿地もある変化に富んだ場所となっています。

 

エコサンクチュアリ内には、森のオウム・カカをはじめ、森に暮らす鳥たちが沢山住んでいるのですが、中でも一番希少なのが、キーウィです。この森には、ハースト・トコエカキーウィが暮らしています。

キーウィというと1種類と思う人も多いと思いますが、実は5種類のキーウィがいます。

● 北島の、ブラウンキーウィ
● 一番体の大きい、ジャイアントキウイ(ロロア)
● 小さいために敵に襲われやすく本島にはもういない、リトルスポッテドキーウィ
● 南島西海岸に1ヶ所しか生息地が残されていない、ロウィ
● 南島南部に住む、トコエカキーウィ

このうち、トコエカキーウィは住んでいる場所によって西海岸のハースト・トコエカキーウィ、フィヨルドランド・トコエカキーウィ、スチュワートアイランド・トコエカキーウィと3亜種に分かれています。

その中でも一番数の少ないハースト・トコエカキーウィが、なんとオロコヌイ・エコサンクチュアリに保護されているのです。キーウィは、小さいうちは外敵から身を守ることができないので、オロコヌイで小さいヒナが大きくなるまで守り、それから自然の中に戻すということをしています。これまでに、45羽のヒナがオロコヌイに来ているのです。

森の中でキーウィを探すのは大仕事!

さて、番組に登場したのは、コンサベーション・マネージャーのエルトン・スミスさん。今日の仕事は、オロコヌイを卒業して他の場所へ引っ越すために、森に放してある若鳥のうちの2羽を捕まえるというものです。

 

 

エコサンクチュアリは307ヘクタールにも及ぶ広大な土地です。まさに、干し草の中から針を探すような仕事ですが、エルトンさんは、どう思っているんでしょう。

「大体の場所は分かっているから、何人もで囲い込んで、その輪を縮めていって、捕まえる・・・という計画通りには、まあ、いかないだろうね」

最初から、かなり厳しい予測を立てているようですが、少なくともキーウィたちには個体識別できる無線発信機がついているので、それをまずは追っていきます。

 

 

かすかなピッ、ピッという音を頼りにしていくと、大体の方向が分かってきます。

 

 

この森のどこかの茂みにいるから、みんなで囲んで行こうと。ただし、キーウィが駆けだしたら、面倒なことになります。

 

 

いました! 深い茂みの中にいるところを、なんとか引きずり出していきます。

 

ようやく捕まりました。しかし、問題は2羽目。追い詰めたと思っても、さらに森の奥深くに逃げていってしまい、どうにもなりません。

1羽をすでに捕まえているので、引越しのためにストレスを長引かせるわけにはいきません。少しでも早く捕まえなくてはならないので、スタンバイしてもらっていた力強い助っ人に頼ることになりました。

その助っ人とは・・・・?

自然保護の専門犬、ポピー

オロコヌイ・エコサンクチュアリのキウイを捕まえるために登場したのは、コンサベーション・ドッグ(自然保護犬)のポピーと、ハンドラーのジャシンダ さん。

 

 

自然保護犬は、特にキーウィや海鳥などの鳥を探し出し、隠れているところから追い立てる訓練をされています。

森の中は人が入れないほど密生しているところが多いので、森から草地へと追い立ててもらうというのが作戦です。いざ、出陣!

 

 

鳥を傷つけないように訓練はされていますが、実際の仕事の現場では、口輪をつけています。鎖をつけずに放し飼いになっている飼い犬などは、一晩で何十羽ものキーウィを殺してしまうこともあるのです。

集中して匂いを嗅いで、隠れているところを探し出します。

 

(ガサゴソ、ガサゴソという草の中を潜り込むシーンが続く)

ポピーのおかげで、作戦通り、森の中から草地に入ってきたキーウィ。レンジャーの人が飛び込むようにして捕まえました。

 

この2羽のキーウィたちは、テアナウへと移動するとのこと。

オロコヌイ・エコサンクチュアリは、一般にも解放していて、誰でも入場料だけで入ることができますが、夜行性のキーウィには滅多に会える機会はありません。しかし、見えないところで様々な保護活動がされているのです。

アシカがSea Lion(シー・ライオン)と呼ばれるには理由がある

舞台はダニーデンのさらに北部、ワリントンビーチに移ります。

登場するのは、こちら。

 

ニュージーランドアシカ(New Zealand Sea Lion)の赤ちゃんです。

ニュージーランドアシカは、世界のアシカの中でもっとも数が少ない希少種で、そのほとんどは亜南極の島々で繁殖しています。

もっとも、数が減ってしまったのは人間のせい。かつて、ニュージーランドではアシカ・オットセイ猟が盛んで、油や毛皮を獲るために大量に捕獲・殺戮していたのです。

本島で繁殖することもなくなっていたのですが、1993年、奇跡が起きます。ある農家の人が玄関の扉を開けたところ、動物が呻いているような声がしました。探していたヤギに違いないと思ってその鳴き声を追っていくと、なんとそこには、ニュージーランドアシカの母子だったのです!

これは、本島で150年ぶりに確認されたアシカの出産でした。

 

 

以来、毎年少しずつですが、ニュージーランドアシカは繁殖のためにダニーデン近辺にやってくるようになりました。

 

 

今日は、ニュージーランドアシカの赤ちゃんに、個体識別用のタグをつける日。自然保護省ダニーデン支部のジム・ファイフさんがリーダーとなって、注意事項を話します。

「アシカの姿を少しでも見たら、すぐ教えてくださいね。いつ母親が戻ってくるか分からないですから」

そう、アシカの赤ちゃんに近ずけるのは、お母さんが食べ物を獲りに海へ出ている時だけです。その時に、子供を「いじめている」人間を見られたら、怒って襲いかかってくるのは間違いありません。よく注意しなくてはならないのです。

 

 

普段からニュージーランドアシカの保護と啓蒙に勤めている、ニュージーランドアシカ基金の人たちも協力します。

 

 

茂みの中に隠れていた赤ちゃんをそっと持ち上げました。何が起きているのか全く分からず、ぼーっとしている赤ちゃん。おとなしくて、いい子・・・可愛いです。しかし、このがっちりした手袋にご注目ください。この手袋がすぐに必要になります。

 

 

突然、暴れ始めました! アシカをシー・ライオンと呼ぶのは理由がちゃんとあります。こんな小さい赤ちゃんでさえ、3人の大きな男性がようやく抑え込めるほどの、すごい力です。

しかし、これはどう見ても「いじめてる」ように見えますよね。お母さんが戻らないうちに、早く仕事をしなくてはなりません。

 

 

個体識別用のタグを足ひれにつけ、さらに爪の一部をDNA用に切り取ります。

 

最後に体重測定。14.5kgでした。赤ちゃんだからこうして測れますが、大人のアシカは、メスで最大160kg、オスはさらに3倍も思い450kgにも達する巨体です。

気をつけなくてはならないのも、無理ないですね!

 

さあ、終わりました。もう帰っていいよ、と降ろしましたが「なんだか分からないけど、僕、好きじゃなかったよ」というようなちょっと恨めしげな顔をしていますね。

これもちゃんとデータをとって、保護に役立てるため。あとは元気に自由に育っていきますように。

窓ガラスに衝突! ニュージーランドバト(ケレル)

ダニーデン野生動物病院は、ペンギンやキーウィなどの珍しい動物たちの他にも、次々と原生動物、特に鳥たちが運び込まれてきます。おそらく、こうした鳥たちこそが、病院の恩恵を一番受けていると言えるでしょう。「普通の鳥」は、これまでなかなか診療や手術を受ける機会がなかったからです。

 

ニュージーランドバト(マオリ名ケレル)は、日本のカワラバト(一般に知られるハト)に比べると、体の大きさが倍近くもあり、鮮やかな緑が美しい目立つ鳥です。

窓ガラスにぶつかってきて、怪我をしたハトなどを、市民が運び込みます。必要であれば手術、リハビリマッサージなどを丁寧に施して、飛べるようになると、今度は他の施設に移ります。

 

 

プロジェクト・ケレルは、ニュージーランド国内では唯一、ケレルだけのリハビリテーション施設を運営している市民団体です。団体、というよりは、ほぼ1つの家族が運営していると言ってもいいでしょう。

 

 

ニックさん一家の敷地内には、大きなケレル用の柵があり、子供達も交えて、怪我をしたり病気になったハトを自然に戻すために献身しています。

「最初思ったよりも大きなプロジェクトになっていって、今は子供達にとっても、とても大事なものなの」

 

ケレルのリハビリテーションには、高さよりも、飛べる長さのある場所が必要ということ。大きな柵です。

 

動物たちにとって、安全に暮らせるスペースがあるということは本当に大事。ダニーデンはだんだんと、野生動物たちが暮らしやすい場所になっていっているんだな、と思いました。

交通事故にあったプケコ

ダニーデン野生動物病院に、またべつの鳥が運び込まれてきました。クイナの仲間、プケコ(セイケイ、パープル・スワンプヘン)です。交通事故にあってしまったようで、倒れているところを見つかり、運び込まれました。レントゲンを撮ったところ、内出血が激しいようです。

 

ちょっと難しいかもしれない、ということでしたが、痛み止めなどの薬を処方して休ませました。

しかし、残念ながら、生き延びることはできませんでした。

「少なくとも、この子は、暖かい場所で、痛みがなく逝くことができたから、よしとしなくてはならないわ」

どんなに頑張っても救えない命もあるのです。

病院設立から1年!

2018年1月15日にダニーデン野生病院がオープンしてから、ちょうど1年が経ちました。その間に、病院は400を超える動物たちの命を救ってきました。

 

すでにもう、ダニーデンは、野生動物病院がないことなど、考えられません。動物たちの命を繋ぎ、人々の心をつなぐワイルドライフ・ホスピタル。その忙しさは、これから加速的に増していくのです。

“Wildlife Rescue New Zealand”、第1回目のエピソードはいかがでしたか?

2回目は、すでに放送されており、ニュージーランド国内の方はこちらで見ることができます。見られない方には、またレポートをお送りしますね!

それでは、また! Ka kite Ano!

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