ニュージーランドの権威ある野生生物写真コンテスト、2020年度受賞者発表! 審査員もビックリな裏話もご紹介

Kia Ora! うちだいずみです。

NZ南島のダニーデンは、「野生生物の首都(New Zealand’s Wildlife Capital)」と言われる自然の豊かな街。その美しさをカメラにおさめようと、多くの写真家がしのぎを削っている場所でもあります。

毎年行われているオタゴ野生生物写真コンテストは、こうした写真家たちが頂点を目指すハイレベルなコンテストです。

私は昨年に引き続き、今年も審査員を務めました。受賞者たちから聞いて「えええっ!」と驚愕したこともありますので、ご紹介しますね。

オタゴ野生生物写真コンテストとは?

Photo: Olly Aughton 写真コンテストのポスターなどに使われる写真として、このカカの写真が選ばれました

 

今年21回目を迎えるオタゴ野生生物写真コンテスト。オタゴ地方に在住するアマチュア写真家なら誰でも応募でき(動物部門・植物部門は14歳以下と15歳以上に分かれる)、部門別に審査されます。最後に部門受賞者の中から、大賞が選ばれます。

ー動物
ー植物
ー人間の影響(Human Impact)
ーペット(14才以下のみ)
ー夜空
ー初参加(←NEW!)
ー動画(30秒以内)

応募者は、写真を5点、動画を2点まで提出することができます。今年の応募は6月30日に締め切りで、写真1813枚、動画53本がエントリーされました。

賞は、部門賞1作品、部門ごとの奨励賞2作品ずつ(Highly Recommended)、大賞1作品、審査員特別賞1作品、博物館ビジュアル賞1作品(ポスターなどに使われる)となっており、今年からコンテストに初参加した人の中の最優秀賞も1作品選ばれることになりました。

写真部門の審査員は6名なんですが、審査員の数が偶数というのが、実は困りもので、賞を決める時に完全に票が割れると、3対3になってしまうのです。さあ、今年はどうだったでしょうか。

写真選考はどうやっているの? 〜第1次選考

私が審査員となったのは昨年、今年は2年目です。審査のプロセスは、まず第一次選考として、審査員それぞれが、部門ごとに賞候補を10作品選ぶところから始まります。審査員は主催者から送られてきたデジタルファイルを見て、10作品にまで絞ります。

前回、このプロセスについては詳しくブログに書いたのですが、エントリーされた写真の中から9割ほどを落とすのは、実はそれほど難しい作業ではないんです。それは、技術的な問題と、テーマの面白さの2点から、すぐに決められるからです。

最初に落とされてしまうのは、このような写真ですので、応募する際にはよく気をつけてくださいね!

  • ピントが合っていない。シャープでない。
  • 構図が決まっていない(主題が目立たない、余白が多すぎる、必要なところが切れているなど)。
  • 露出が合っていない(暗すぎる、明るすぎる)。
  • 色がおかしい(加工され過ぎている、合わないフィルターを使っているなど)。
  • 主題がありきたりである(ミツバチと花とか、特徴のない夕景とか)。

30枚ほどが残ったところからが、いよいよ選択の時です。ここは大変悩みますし、審査員の好みから「推し」が決まってくるところでもあります。1週間ほどかけて、10枚に絞り込んだら、次は最終選考です。

激論続く、最終受賞者の選考会

最終選考は、審査員が全員集まって行われます。動画は動画チームがすでに選んでありましたが、写真部門は6名が顔を合わせて審査します。

審査員がそれぞれ選んだ10作品は、全てプリントアウトされます。当然、重なる「推し」もあるのですが、主催者によると今年は審査員の選考作品があまり重なっていなかったとのこと。ということは・・・そう、かなりの激論になりました!

特に激論だったのが、大賞。揉めに揉めました。「数の少ない珍しいヤモリ・」と「可愛いフクロウ」の2作品が残ったのですが、どちらも写真として芸術的にも、技術的にも素晴らしかったからです。

最終的には「珍しいヤモリは、撮影するだけでも大変なのに、完璧な構図で、目にもピントがあい、美しい斑紋を表現できている」という野生生物としての価値も加味して3名の審査員が推しました(私も含みます)。そして「可愛いフクロウ」を推した審査員が2名、最後の1名は「どちらでもいい」という立場を取ったため、3対2(棄権1)でヤモリに決まったのでした。

授賞式当日、自然関係者が次々ステージへ!

審査のほぼ1ヶ月後に、展示会場ともなるオタゴ博物館で、授賞式が行われます。

1次選考に残った作品のカメラマンは、全て授賞式に招待され、式当日は200名ほどが集まりました。

審査員は、それぞれ部門を担当してプレゼンテーションをしました。私は去年は授賞式に参加できなかったので、今回がプレゼンテーションの初参加! かなり緊張しましたが、事前に練習をして(←)、なんとか務めました。

左上:14才以下の動物部門賞&奨励賞・植物部門の奨励賞と3つも賞を取ったレギュラーである学生。右上:こちらも天文写真でなんども受賞しているレギュラー。左下:ダニーデン野生動物病院スタッフが、写真が自然保護に役立っているとスピーチ。右下:植物部門をプレゼンする私(隣の人に撮ってもらったら見事にのっぺらぼうにw)

興味深かったのは、受賞者の中に知人・友人が実は沢山いたことです! 審査員は、作品を撮った人の名前は知らされず、純粋に作品だけを見て選考をするので、当日まで誰が受賞するのか分からないのです。蓋を開けてみれば、自然関係の研究者や、自然イベントで出会った人など、顔なじみが次々に呼ばれてきたので、とても嬉しくなりました。

最後に発表される今年の大賞は、オタゴ大学で野生動物の管理について学んでいるサム・パーディーさん(21才)でした。授賞式では「ニュージーランドには100種類以上の爬虫類がいるのに、ほとんどの種に関しては殆ど知られていません。この受賞をきっかけに、タウトゥク・ゲッコーのことを知ってもらい、保護の助けになれば嬉しいです」と語りました。

サム・パーディさんは、学業のかたわら、オロコヌイ ・エコサンクチュアリでエデュケイターの仕事を担当。ダニーデンの野生生物フェスティバルであるワイルド・ダニーデンでもスピーカーや広報としての仕事をしており、自然関係者の間では誰もが知っている研究者です。

「大賞を受けるべき人を選べて、本当に良かった!」

と心から思いました。

エントリー5枚中4枚選考に残ったのが、なんと5歳の子!? その秘密は・・・

授賞式に参加して、驚いたことは他にもありました。

友人家族が来ているのに気づき、話しかけたら「うちの子が作品が4枚も展示されてて、すごく嬉しい!」と言うのです。でも、その子、めっちゃ小さい! 5歳なんです。そして、エントリーした5枚のうち4枚が展示ということは、今回最もボツ作品のなかった写真家かもしれないのです。

「どういうことっ!?」と思い、その4枚の写真を見せてもらって、思わず唸りました。私が「この昆虫クローズアップ写真は素晴らしい」と思っていたものがほぼ全部、その子のものだったのです。

しかも、その子が「これで撮った」と首にかけていたカメラが、どう見ても「普通のコンパクトカメラ」。私があとでググったところでは、2012年に発売されたCanon PowerShot SX150 IS なのです。

「こ、こんなカメラで、ピントがばっちり合い、奥行きがいい感じにボケて、構図も決まった写真を撮れるものなのか!?」

驚愕した私に、その子のお父さんがこんな話をしてくれました。

「写真を撮り始めて分かったのは、この子は、いつまでもいつまでも、ずーっとずーっと、虫がちょうどいい場所に来るまで待っていられるということなんです」

これは本当にすごいことです。野生動物の撮影に成功するには、まず忍耐が必要。まさにこれを、生まれながらにして知っている子供なんですね。

森を描いた見事な作品も、撮影はxxxxで

 

もうひとつ驚いたのが、こちら14才以下の植物部門賞となった、こちらの森の写真。ニュージーランド人全ての記憶にあるのではないか、と思われるような美しい木漏れ日を、見事に表現しました。

審査会場でも「これは逆光でもディテールが失われてなくて、大変美しい」と、全員一致で決まった賞なのですが、私に興味があったのは「この暗く難しい状況を、どんなカメラを使って撮影したのか」です。

会場で受賞者に聞いてみると、「iPhoneよ」と。ががーん。確かに携帯は暗いところには強いのですが、このディテール! 伸ばしても綺麗!

受賞者のお母さんが「もう少しちゃんとしたカメラを買ってあげる時期が来たのかも」と言っていましたが、5才の子のカメラも見ていた私は、絶対そうだ、と言えない気持ちになっていました。

結局、野生生物写真って、なんだろう?

今回の写真展の審査・授賞式を終えて、つくづく感じたのは、良い野生生物写真を撮るには「自然に対する情熱」が一番大事という基本でした。

カメラがそこそこでも、きちんと動物を待てば撮れる。
素晴らしい風景の中を歩いていれば、出会える。
絶滅の危機に瀕した動物のことを学び守ろうとする過程でチャンスが来る。

こうした自然への情熱が、年齢・キャリアなどを超えて、何よりも大事だということを、改めて感じます。

野生生物写真のエッセンスは、テクノロジーがどんなに進歩しても、変わることがないようです。

 

今日もお読みいただいてありがとうございました。

それではまた! Ka kite Ano!

 

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