【土の科学】ニュース:バナナの皮で作った紙袋がジャガイモの害虫を防ぎ、生産性を5倍に上げる

こんにちは! うちだいずみです。

私は、近年土壌に住む生物の勉強をしているのですが、今日は、サイエンス誌の記事から、ジャガイモの生産性を上げる大きな発見についてご紹介します。

日本も含め、世界中のジャガイモ農家を苦しめているジャガイモシストセンチュウという害虫がいます。

これはジャガイモの主に根に寄生する害虫で、大きさ1mmほどの透明で細長い生物です。生活史が複雑なので、今回の発見に関係するところだけを取り上げますと、その卵はジャガイモの根から出るアルファカコニンと呼ばれる化学物質等を察知すると、孵化します。

ジャガイモは、他の有益な土壌微生物を引きつけるためにアルファカコニン等を出しているのですが、それをセンチュウの卵が嗅ぎつけて、利用してしまうのです。

ところが、バナナの皮で作った紙でジャガイモを包むと、出てきた根から滲出するアルファカコニンなどを、そのバナナペーパーが94%も吸収し、その結果センチュウの卵の孵化が約85%も減ったのだそうです。

この発見は、ノースカロライナ州立大学の研究者たちが、東アフリカで高い殺虫剤を使うことができない農家を助けるために、バナナペーパーに殺虫剤を染み込ませ、ジャガイモに巻いて植えたところから始まりました。

ジャガイモの生産量が増えたので、その仕組みを探っているなかで、殺虫剤を全く染み込ませなくても、あるいは通常の5千分の1の量を染み込ませたバナナペーパーでも、大きな成果が上がることが分かったのです。

ジャガイモシストセンチュウに規制されると、葉っぱが黄色くなり、ジャガイモは小さく、また傷を持ってしまうために売れなくなり、駆除の難しい大きな問題となっています。

ジャガイモを植える前にバナナペーパーで巻くのは、手間のかかる仕事なので、まだ実用化までは至っていませんが、安く持続可能な新たな技術として大きな注目を集めています。

センチュウは、土の中に住む動物の中でも大事な役割を果たしている生物グループです。植物にとっては、とても役にたつ存在であるものも、厄介な存在であるものもいて、まだまだ私たちには分かっていないことだらけ。こうした発見は、大きなブレイクスルーになると期待しています!

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