4月25日は世界ペンギンの日。第10回国際ペンギン会議を振り返りましょう。

ニュージーランドは、実は、世界で最もたくさんのペンギンが見られるです。全18種のうち13種が確認されています。私の住んでいるダニーデンにも、キンメペンギンとブルーペンギンの営巣地があり、海岸を散歩していて見られることも時々ある、とても身近な動物なのです。

しかし、ペンギンたちの生息状況は悪化しており、数が減っている種がほとんど。4月25日は世界ペンギンの日(World Penguin Day)、世界中でペンギンたちについてもっと知ろう、という動きがあります。

私は昨年、ダニーデン市内で開かれた第10回国際ペンギン会議に参加し、そのレポートを地元の野生生物フェスティバル Wild Dunedin のニュースレターに寄稿しました。

世界ペンギンの日にちなみ、このレポートを翻訳しましたので、ご覧ください。

国際ペンギン会議、世界的な行動を訴える

「国際ペンギン会議、世界的な行動を訴える」
2019年12月2日 内田シュミット泉 (オリジナル原稿および日本語訳)

2019年8月24日から28日にかけて、ダニーデンで第10回目の国際ペンギン会議が開かれました。この特別な会議は、世界中のペンギン専門家を結びつけるために、オタゴ大学のロイド・デイビス博士とオタゴ博物館のジョン・ダービー博士が創案し、1988年に第1回が開催されました。

国際ペンギン会議の生みの親ロイド・デイビス博士(左)とジョン・ダービー博士(右)

 

当時は、移入種問題と森林破壊によるペンギンの営巣地の損失が認識されたところで、ペンギン・プレイス(私営の保護・エコツアー施設)キンメペンギン基金がスタートしたばかりでした。

この最初の会議に参加したのは、80名の科学者でした。デイビス博士は、これは世界のペンギン専門家のおよそ8割だろうと考えています。そしてこの会議は、以来世界的な共同研究や保護の機会を提供する、計り知れない価値のあるものとなったのです。

それから31年がたち、ダニーデンに272名の参加者が集まりました。デイビス博士は、今の参加者も、世界のペンギン専門家のおよそ8割ということは変わらないと見ています。

筆者は、正直に言って、少しショックを受けました。現在では、ペンギン研究者の数はもっと大勢いるだろうと思っていたからです。

「ペンギンの将来は、この部屋にいるみなさんにかかっています。ペンギンたちの未来は、私たちの手の中にあるのです」パブロ・ボーボログル博士

 

アルゼンチンの海洋生物学者であるパブロ・ボルボルグル博士は、世界ペンギン協会(Global Penguin Society – GPS)の設立者であり代表を務めています。これは、世界ではじめて、ペンギン保護を地球的規模で協働していくために設立された団体です。

ボーボログル博士は、会議でこう発言しました。

「ペンギンの将来は、この部屋にいるみなさんにかかっている。ペンギンたちの未来は、私たちの手の中にあるのです」

ほんの一握りの人たちに、なんと大きい責任がかかっているのでしょうか。

およそ70の口頭発表のテーマは多岐に渡りましたが、テクノロジーの発展により、いくつかの研究分野が特に新たに創出・発展していることがわかりました。例えば、超小型のバイオロガーやカメラのおかげで、ペンギンが海で何をしているかが分かるようになってきています。

過去においては、ペンギン研究は繁殖、社会行動、音声コミュニケーション、営巣地の使用状況など、陸上での観察に制限されていました。今はペンギンたちの本当の故郷である海での行動にアクセスすることができるため、ペンギンに対しての知識は拡大しています。ペンギンの採食行動範囲、季節的・期間的な分布変化、さらに水中での音声コミュニケーションや社会行動に関してまでもデータを取ることができるのです。この海域でのデータは、特に陸上にあまり戻ってこない若鳥の行動を知るために重要です。

環境中に存在する極小のDNA片(eDNA)は、海洋の新たな図を描き出してくれます。科学者たちは、海水を集め、そこに浮遊するeDNAを解析することにより、その海水の中にどんな種類の生物がいたかを見つけ出すことができます。これは、ペンギンの住む地域にどんな生物(特に餌となる生物)がいるかということを、動植物に干渉することなく、しかも遥かに安価に知ることができる方法なのです。

また、ペンギン研究にはどんな人も参加することが可能です。市民サイエンスのプロジェクト「ペンギン・ウォッチ」は、ウェブサイトに大量の南極大陸からの営巣地のタイムラプスと空撮をアップしています。参加者の仕事は、個々の写真に何羽ずつ成鳥、ヒナ、卵があるかを見つけて、それを報告することです。

コンピューターにその大量の報告データが集められ、解析されて、やがては人のなかなか行けない地域で何が起きているかを知ることができるのです。

ハッピー・フィート! 完全ボランティアからなる運営委員たちが、ペンギンソックスをお披露目

 

こうした新たな技術と研究方法にはワクワクしますが、現実はというと、ペンギンたちの未来は危ういのです。

ペンギン全種類のうち、半分以上は絶滅危惧種 (Endangered, EN) あるいは危急種 (Vulnerable, VU)  となっています。中でもアフリカペンギン、ガラパゴスペンギン、そしてニュージーランドのキンメペンギン(マオリ名ホイホ)の3種類は絶滅寸前種 (Critically Endangered, CR) です。

 

ニュージーランドのホイホは本当の危機にあり、科学者は、もし何の手も打たなければ、2060年まで(あるいはもっと早く)にニュージーランド本島から絶滅するだろうとしています。亜南極圏にもキンメペンギン群はいますが、どのように保護したらいいか分からない状態です。

国際会議の間に、ペンギンの将来に大きな影響をもたらすとして何度も繰り返し出てきたのが、気候変動です。過去のデータから、気温・水温の上昇はペンギンの有利にはならないということが示されており、保護政策はさらに複雑なものとなるでしょう。

ダニーデン市のシンボルであるキンメペンギンがいなくなるとは、今は考えられないことです。自然保護省は、「ホイホ保護回復戦略・行動計画」を発表したばかりです。

今こそ、科学がこの先の道筋を指し示す時です。

筆者を含め、会議の参加者に希望の光をくれたのは、ホア二・ラングスバリーさんが紹介してくれたマオリ語の諺だと言えるでしょう。

生態学者であり、オタゴ半島のマオリ族Te Ruananga o Otakou代表であり、オタゴ半島基金他様々な保護団体で活躍するホア二・ラングスバリーさん

 

「知識が集まれば、啓示の光がそれに続く」

今、このダニーデンで会議が開かれたことはとても有り難いことでした。次の会議は、2022年にチリで予定されています。

(以上、本文終わり)

ペンギンに未来はあるか

今現在、COVID19の流行のために、世界中のさまざまな機能が止まっています。ペンギン研究・保護も中断しているところがあると考えられますし、今後、経済的にも不況が訪れると、保護に回るお金もなくなってくると予想されます。

また、今年がすでに、記録史上最も暑い年になるのではないか、という予測も出てきており、気候変動による今後の影響も計り知れません。

ロックダウンや外出自粛の毎日の中、私達ひとりひとりにできることは限られているかもしれません。

しかし、今日はペンギンのこと、そしてペンギンたちと私たちの共通の世界である地球のことを、少し考えて欲しいのです。動物学者であるジェーン・グダール博士はこう語っています。

私たちは、自分が自然界の一員であることを認識しなくてはなりません。私たちは自然界のおかげで生きていられるのであり、それを破壊することは、子供達の未来を盗むことなのです。

私たちは誰でも、1日1日、違いを生み出すことができます。

 

パンデミックの機会に、私もできることを考えたいと思います。

なお、国際ペンギン会議については、昨年連続ツイートでもお伝えしていますので、関心のある方はご覧ください。

それでは、Ka kite ano!(See you again!)  Stay home, stay safe!

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