ニュージーランドの野生動物を守れ! 『Wildlife Rescue (第2回)』NZの新しい住民・ヒョウアザラシ編

ニュージーランドの野生動物の首都、ダニーデン。ペンギンやオットセイなどはお馴染みなのですが、時折、珍しい動物もやってきます。

先月(2019年11月)から始まったTVシリーズ『Wildlife Rescue New Zealand』(ワイルドライフ・レスキュー・ニュージーランド/NHNZ制作NZ On Air協力ChoiceTV放送)は、ダニーデンの野生動物病院を中心に、ニュージーランドの希少な動物たちを守る活動を追っています。

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Kia Ora! うちだいずみです。

ニュージーラドの遊び方を1000個見つけるブログ、TVシリーズ『Wildlife Rescue New Zealand』の放送内容を、制作会社NHNZ社の許可を得て、詳しく解説しながらお届けしています。

今日は2回目の放送内容から、ヒョウアザラシをご紹介しましょう。

南極海からやってきた! ヒョウアザラシ登場

ニュージーランドは、太平洋南部〜南極海につながる大きな海に点々と浮かぶ島国です。豊かな南極海の恵みを得て、ペンギンやアルバトロスなどとともにやってくるのが、オットセイやアシカ、そしてアザラシの仲間です。

ニュージーランドでは、ニュージーランドオットセイ(本島など)とニュージーランドアシカ(本島など)とミナミゾウアザラシ(亜南極の島々)は繁殖しており、ニュージーランドの住民(resident)として認められています。第1回目の放送ではアシカの赤ちゃんも登場しました。しかし、時々しか会えない動物もいます。

それが、ヒョウアザラシです。

ヒョウアザラシは、通常は南極海に暮らし、氷山で出産すると考えられていますが、ニュージーランド本島にも来るものもいるのです。

人気のビーチにごろんと登場!

 

ダニーデン市内から20分ほど車で走ったところにあるサーファーやファミリーに人気のビーチ、アラモアナ(Aramoana)。ハワイにもスペリングが違う(Ala Moana)同じ名前の土地がありますが、どちらも、アラ=道、モアナ=海で、「海へ続く道」という意味の場所です。ニュージーランドのマオリ語は、太平洋の島々の言葉と共通するものがとても多いのです。

この人気のビーチに、ヒョウアザラシがやってきました。

 

 

それを聞きつけたのが、自然写真家のピート・ナイクさん。ピートさんは、写真をいろいろな角度から撮って、ニュージーランドのヒョウアザラシのデータを集めている団体 Leopardseal.org に提供し、個体識別の手伝いをしています。

Photo by Pete Naik

 

ちょっと謎なポージングをしていますね。砂がくっついていて、体の紋はよく見えないけれど、顎のあたりの点ははっきり見えますね。ヒョウアザラシは体は細いのですが、頭がとても大きく、口ががばっと開くので、「ヘビっぽい」感じがあると言われています。

私はまだ実物に会ったことはないのですが、写真を見るたびに、「なんか干し鱈みたいな体・・・」と思ってます。

 

Photo by Pete Naik

 

こんな風に、口をものすごく大きくガバッと開くことができ、鋭い歯が並んでいます。噛まれたくないですよね! では、ヒョウアザラシに砂浜で会ったら、どうしたらいいのでしょうか。

ヒョウアザラシなど、動物に会った時のルール(ガイドライン)

海岸など、人が集まるところに普通にやってくる海獣たち(海に住む哺乳類のことを海獣、と言います。「怪獣」みたいで、私は好きな言葉です)。その怪獣たちを守るため、ニュージーランドには、Marine Mammal Protection Act(海棲哺乳類保護法 1978年)という法律があり、陸で動物たちを観察したりする時のガイドラインもあります。

それによると、陸で怪獣を観察するには、以下のようなルールを守らなくてはなりません。

海に住む哺乳類の仲間(オットセイ、アシカ、ヒョウアザラシなど)を見る時のルール

1)動物から少なくとも20メートル離れ、動物たちに十分なスペースをあげる。
2)動物と海の間に入らないようにする。
3)犬は紐につなぎ、できるだけ離れる。
4)乗り物に乗っている場合は、動物から少なくとも50メートル離れる。
5)絶対に動物に触ろうとしてはいけない。攻撃的になることがあるし、病気を持っていることも多いから。

狭い浜などにいるときには、20メートル離れることができない可能性もありますが、以上のことは常に頭に置いて「できるだけ離れる」を心がけて、動物にストレスを与えないようにしなくてはならないのです。

では、アラモアナの人々はどのような行動をとっていたでしょうか。

 

 

親子連れが、ヒョウアザラシの向こうに行こうとしていますが、近づきすぎです。これはルール違反

 

 

犬を連れた2人組が離れたところから見ています。これは、距離的にはOK。また、犬を紐で繋いでいるのもOKです。

しかし、問題はヒョウアザラシと海の間にいること。上のルール(2)に反しています。これでは、ヒョウアザラシが海に入りたくなったら、人間が邪魔な位置にいることになります。もし、動物が海に入れないために攻撃的になって、人間を追い立てた場合、人間の方こそ海にしか行けなくなってしまいますし、また転んだりする可能性もあり、危険です。これもルール違反です。

 

そして、こちらはダニーデン野生動物病院・院長のリサ・アルギラさん。さすが! 距離をしっかりとって、動物の邪魔にならないようにしていますね。完璧にルールを守っています。

動物にストレスを与えないように、そして私たちも安全でいられるように、ちょうど良い距離で野生動物と付き合っていかないとならないですね。

2019年、ヒョウアザラシも「NZの住民」と認定される!

実は、ダニーデンでは、ここ数年、ヒョウアザラシの話題がたくさん出ています。その最大のものは、2017年の9月に、ヒョウアザラシがダニーデンのビーチで出産したというニュースでしょう。

 

ヒョウアザラシがニュージーランド本島で出産したのは、これが40年ぶり! それに「出産する」ということは、「住んでいる」ということなのではないでしょうか(残念ながら、この子は生き延びることができませんでした)。

先ほどのピートさんが写真を送っていた Leopardseals.org では、クリスタ・ハップマン博士が全国の市民サイエンティストに呼びかけて、ヒョウアザラシの目撃情報と、個体識別用の写真提供を求めました。その結果、なんと、昨年1年で339件の目撃例があり、ダニーデン周辺だけでも30頭もの違う個体が目撃されていることがわかりました。

さらに記録を遡っていくと、この800年の間に3000以上の目撃例が記されていることがわかりました。

そしてとうとう、つい最近、2019年の9月には、ヒョウアザラシは「ニュージーランドにやってくる動物ではなく、住んでいる動物である」と自然保護省に認められたばっかりなのです。

 

オークランドでも有名なヒョウアザラシ・オファ(Owha)

ヒョウアザラシは、NZ全国あちこちのビーチで目撃されており、オークランド・ハーバーにさえも出現しています。ここ7年ほど、ダニーデンでもオークランドでも目撃されているメスのオファ(Owha)は特に有名で、実は、今日、このオファとクリスタ・ハップマン博士を主人公にした短いドキュメンタリー“Owha”Lana Young 製作・監督)が公開されました!

12分間の短いムービーですが、今までほとんど知られていないヒョウアザラシのいろいろな素顔を見ることができますので、ぜひご覧ください。

 

 

このオファが混み合うハーバーに出現したことからもいれば「もうオークランドの1部」と大歓迎する人たちも多いですが、「人に危害を与えるかもしれない。どこかに移せ!」「船に損傷を受けた!」と怒る人もいます。

10月末に、オファは、鼻面を何らかの銃で撃たれて血を流しているところを発見されました。複雑な治療になる可能性があることなどから、今は静観・観察されていますが、本当にショックです。

 

人間と野生動物、同じ土地・海を分かちあって共存するためには、まだまだ人間側に学びが必要です。そして、人間が学ばない限り、多様性の損失につながり、人間そのものも生きていけなくなってしまうでしょう。今が、その正念場です。

『Wildlife Rescue』に登場したヒョウアザラシも、やがて海に帰っていきました。次はどの浜に現れるでしょうか。どうぞ、無事に生き続けてくれますように。

それではまた。Ka kite Ano!

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コメント

    • にな
    • 2019年 12月 17日 8:34am

    ペンギンが大好きで、正直なところ、頭では自然の摂理だとわかっていても、あまり好きではなかったヒョウアザラシ。向かうところ敵なしのヒョウアザラシかと思っていましたが、人間が敵とは悲しいですね。

    • アバター画像
      • izumi
      • 2019年 12月 20日 4:25pm

      になさん、コメントありがとうございます!

      ヒョウアザラシ、私もいまいち魅力を感じていなかったんですが、よく知ってみると、面白い動物だし、ぶさかわちゃんだな、と思うようになりました。ペンギンの敵としても知られていますが、生態を知ってみると、オキアミや魚もいっぱい食べているみたいなので、「ペンギンばかり食べる」というのはメディアイメージなのかな、と思います。

      人間はほとんどの動物の敵ですね

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